温熱療法の真髄
ほどよい刺激は体によい
意外に聞こえるかもしれませんが、十数年前放射線が体にとってよい影響も与える、という話がありました。
一九八〇年代のアメリカで、ミズーリ大学のラッキー教授が主導して、微量の放射線が人間の体に与える影響を実証しました。
放射線に限らず何でもそうですが、大量に浴びると害になるものでも、少量であれば体にいい効果が出てくる、つまり少量の刺激は生体にとってよいものだということです。
ほどほどの刺激によって、人間の体が起き上がってくる、反応してくることがポイントなのです。
こちらが何かを人間の体に為す、というよりも、適当な刺激・適当な問いかけをすると必ず人間の体は応えてくれる、それだけのものをすでに持っているのです。
例えば、気持ちが奮起したときはその気持ちに体が反応し体が温かくなるし、その逆もあります。
それではその適度な刺激を与えてくれるもので、私たちに最もなじみの深いものは何でしょうか?
私たちはそれを熱と考えました。熱とはエネルギーであり、心と身体の垣根を乗り越えるために最もふさわしいものであると、私たちは考えたのです。
熱を入れるとは?
熱を入れるというとお灸が思い浮かびます。
しかし、お灸は子供にはかなり負担になります。それにツボはそんなに簡単に見つかるものではありません。微妙に位置が変わるのです。
そこでどのように熱を体に入れようかと考えた時に、場所を移動しながら入れていけば、体の反応が速いことがわかりました。そのための道具として温熱器が開発されました。
一か所に固定させず、熱を入れる、動く、熱を入れる、動く、頭と体が常時やりとりしながら熱が入っている状況を確認することで、神経のリハビリも同時にできるのです。
これが温熱器の面白いところです。自分で移動させながら熱を入れていって、自分の体に自分で打診をしていく、自分で自分に手当てを為していくのです。
健康チェックセンサーの役割を果たすともいえましょう。
体は、私たちが考えるよりもはるかに巧妙かつ精緻にできています。
私たちは、まずは自らの体の復元力、回復力、免疫力に再度信頼を抱くところから始めるべきです。
ある程度熱を入れることによって、熱を期待している体の中の器官、主にリンパ球とか白血球が、最大限に活躍できる状態に持っていけば、後は体のほうが対応してくるのです。
温熱器の熱自体が治すのではなく、熱はきっかけなのです。
結果的に人の免疫力を立ち上がらせるために、体がもっとも反応しやすい熱を使うのです。
「温かい」という言葉のイメージをご自分の過去の体験から思い起こしてみてください。気持ちが和む経験のはずです。
和んだ気持ちが、筋肉や自律神経の緊張を解き、体が本来持っている自身のバランス調整能力を最大限に生かすことになるのです。
心と体が対話するということ
熱の刺激によって体の免疫機能が働き始めた時に、自分で自分の体を守ろうとする機能をその状態で維持するためには、心の状態が大変大事になります。
自分の心と自分の体、自分の心と他人の心、自分の心と他人の体、自分の体と他人の心、それぞれの場面における信頼関係が絶対条件になると、私たちは考えています。
例えば信頼できる人にやっていただく、「この人は大丈夫だ、すごい人だ」と言われている人にやっていただくと結果が違うという経験をお持ちの方は多いでしょう。
どうやって心の世界でつないでいくかが大事なのです。
熱を入れた後で、その方をどのように励ましていくか、気持ちをつないでいくか、心のレベルをどれだけ向上していくかがとりわけ大切なのです。
例えば、ガン細胞は毎日猛烈な勢いでできています。しかし日常的に発生しているガンを抑え込む力が、人間にはもともとあるのです。そしてこれを抑えきれなくなった時にガンが発現するのです。
ガン検査をすると、結果が出るまでにずいぶん時間がかかるので、その間にガンになってしまう人が多いというデータがあります。
遺伝子異常を自分で引き起こしてしまうのです。つまり、心の不安や自らの体に対する不信が、ガンを引き起こすことすらあるということです。
大事なことは、体のどこからであれ刺激を入れていきますと、その刺激を体が受けて体の論理に従ってその刺激を転換していく、ということを知ることです。有効に使えるものは、体は惜しみなく吸収していくのです。
その際の体の反応は、必ずしも一律ではなくある種の好転反応と呼ばれる逆転現象が現れることもあります。
体の病気がどこで起こるかといわれたら、一つ一つの細胞で異常が起こることが始まりです。
それぞれの細胞が活動するための熱を作っているわけですが、その熱発生機能が、上手に働かないと細胞自体に異常が発生します。
こうした異常が複雑にからみあい、ガン細胞が誘発されます。
しかし毎日大量に発生するほとんどのガン細胞は、体みずからの防御力により抑えることができることを知るべきです。
ミトコンドリアでATP(アデノシン三燐酸)という、一種の体温のもとを作っていますが、作ったあとで老廃物や二酸化炭素をうまく細胞の外に出せるかどうかが大事なのです。
これさえ順調に行われれば、不具合は生じないはずです。肝臓、肺、心臓、どこでも細胞がきちんと動いていれば、その機能は損なわれないはずなのです。
体が錆びついているとか、酸化が起きているということは、細胞で言えば細胞膜の外側に古くなった脂がかなりついて、老廃物がくっついている状態なのです。
例えばそこに必要な熱を与えビタミンEを与えれば、その還元作用により酸化した脂質を細胞膜から取り去って、栄養分、酸素、二酸化炭素、老廃物の行き来をスムーズにすることが可能になります。そこまでの機能は体が勝手に行うのです。
その際、熱を入れた後で、「あなたの免疫力・生命力は上がるよ」という心理的な励ましをすること、生きることへの意欲の喚起を図ること、これに建て前ではなくて本気で取り組んでみると意外なほどの変化を経験することがあります。
全体としての体の復元力が改善されるのです。
温熱器には当然設計図はあるのですが、そのとおりには作られていません。
型ができた後ですら何百人もの人が何百時間もかけて、握った感触や使った感覚で、つまり体と感性・心の語るままに改良してきました。携わる多くの方々の「想い」がこめられているという意味では、稀な器具でもあります。
温熱器はいわばメッセージを送る道具ともいえますが、温熱器からのメッセージがなくても、交感神経、副交感神経を含めた体全体の機能がオートマチックに動いていく状態に戻るのが、私たち温エネルギー事業に携わる者の最終目標と考えています。
体全体の情報を一手に担うと想像されている脳は、必ずしも自身の体を優しい目で見てはいません。例えば熱が不足して冷え切った体があれば、弱い部分から切捨てを行います。
それを防ぐためには指先、足先をマッサージし生き残る意志を脳に伝えねばなりません。手足の指も全てお前の体の一部だよ、という信号を伝えねばならないのです。
体にメスを入れ細胞の連続性を断ち切ったとき、私たちがいまだ認識していない数多くの情報のやり取りが切断されているかもしれません。あるがままの人間の体のあり方を尊重し、体への不安よりむしろ信頼を育て、心の手助けを得て体が本気で自分自身を立て直そうとする力を、数多くの実践をとおし私たちは確信しています。
私たちは、温熱器を使った温熱療法をその中の一つの方法として捉えています。
即ち、温熱療法にしても化学療法、食事療法その他にしても、最終的にはその人間の心のレベルを高い水準に持っていくこと、つまり生きることに価値を見出し誇りを感じることが出来れば、寿命の範囲で十分生きることが出来るのです。
温熱療法の真髄とは、この温かい温熱器を通じてそのことに気づくことです。
私たちは、そのように捉えています。
温かい、気持ちが安らぐ、全てはそこから始まります。
*上記は、宝積 第26号(09年11月)「心と体の対話 中村嘉男×吉野治一」から引用

中村嘉男: 東洋哲学研究者 算命学者 温エネルギー研究会 相談役
吉野治一: NPO法人 チーム医療推進全国ネットワーク 専務理事
温エネルギー研究会 会長